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林間学校

林間学校的なやつに行っている。お世話になっているオバちゃんのために、ただひたすらホームステイ先近くの池で魚を釣る日々。しかし収穫は費やす時間に対してごくわずか。今日に至っては魚を保存するためのビニール袋を破いてしまい、更にオバちゃんに迷惑をかけてしまった。手渡された手提げカバンの口を広げながら、これはクーラーボックスが必要だなぁと頭の中で云々する。

跳ねる小魚を手提げカバンへ移している時、実はこいつら食べられる種類ではないんじゃないかと穿った考えがふと湧いてきた。これは図鑑などで確認する必要があるなぁと思ったときには、もう頭の中で数冊の本が浮かんでいる。魚類全般を広範に扱った図鑑や淡水魚に的を絞った図鑑などが並ぶ中、俺が選んだのは「兵庫県の池に住む魚」という薄めの本。これなら池の名前さえ知っていればおおよその候補が絞れて手間が省けるという訳である。

さっきまで俺がいた池は窪地だったようで、今の俺はそれを取り囲んでいる野原を歩いていた。長い一本の畦道以外はすべて草木や花で埋まっている穏やかなところだ。ふと近くの木を見上げると、そこには薄ピンクの羽毛を持つ小鳥がいる。さっそく出番だと「兵庫県の池に住む魚」のページをめくると、バッチリその鳥のことも載っていた。スズメ科で、寂しいときも寄り添ってくれる良いヤツらしい。ついでにその近くを歩いていた長い足を持つ小さなサギみたいな鳥のことも調べてみる。しかし名前は分からずじまい。

いつの間にか俺は土管の中にいた。突然のことで少し窮屈に感じるが、十分歩けるぐらいのスペースはあるのでえっちらほっちら進む。ここがどこに繋がっているのかは分からないが、鳥好きの自分としては先ほどの野原に再び出たいもんだなぁと薄ぼんやり考えながら進む。しばらく進むと、土管の内壁のあちらこちらにメモ用紙程度の紙が多数貼り付いていることに気がついた。見るとそれは、俺がこの間不法投棄した部活のメンバーの名札である。あそこの池はここと繋がっているんだなぁやっぱり悪いことはするもんじゃないなぁと、わずかながらまずい気持ちになる。

土管を抜けると先程の野原に近くに出た。これ幸いと再度野原へ向かい、到着するなり畦道を外れ草むらに腰を降ろす。少し遠い位置になるが、視線の先には青いフクロウがいた。柵にピタリと止まり、顔をこちらに向けている。が、俺のことに気づいているかどうかは分からない。すぐに飛びたつ気配はなさそうだったので俺は例の本を取り出した。

猛禽類の項を探すが、あの青いフクロウの情報はなかなか見つからない。しかし、ページを飾る個性豊かなフクロウを見ているとあまり退屈はしなかった。赤紫色をした高温の息を吐き、それを魔法のように操る狼のようなフクロウ。鱗を身にまとったヘビ型のフクロウ。ヘビに擬態した猫みたいなフクロウ。兵庫県のことをまとめた冊子のようだが、彼らが体を預けている大地はことごとく乾燥ゆえにひび割れていた。背景の夕日の大きさも相まって、まるでサバンナのようだ。

写真と文に目を通しては次のページへという作業を繰り返していると、草むらに突いている右手のそばに一匹のヘビがいることに気がついた。こちらをジッと窺っているようだが、俺はとりたててそれを制しようとしない。しかし、俺が本に視線を戻した瞬間そいつが噛み付いてきて事態は急変した。寸前に首根っこを抑えることに成功したのはいいのだが、ヘビは柔軟な頭を動かし執拗に俺の手へ牙を食い込ませようとしてくる。

いつの間にかヘビは俺の手の内から離れていた。そして再び俺は本を読んでいる。ヘビが再度右手に飛びついてきた。俺は視線を本から離さず、感覚だけでやつの首根っこを押さえつける。掴んでもなお俺の視線は本から離れない。右手の中で暴れるヘビ。爬虫類のヒヤリとした感触がときたま手に触れる。だんだん手が疲れてきて握力が抜けていく感じがする。頭の中で、ヘビごときが人間に反抗するとはとナレーションが流れた。
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