魔法学校

すっかり日も暮れ、泥をたたえた水田が泥なりのオレンジにきらめいている。
テラテラとかピカピカとかヌルリンチョとか。
プールぐらいの大きさのほとんどがそれ。
唯一違うのは、半身浴みたいな様子で浸っている黄色い車とそいつの影。
ついさっきまで俺が乗っていたタクシー。
昼には高校だったのになぁなどと、腕についた乾いた泥をカサブタみたいに扱いながら考えている。

どうも、運転手が電話で手配していた保険屋は結局来ないらしい。
「気を落とさずにね聞いてほしいんですけどね今日中はちょっと無理らしいので。ですから一泊です。もちろんもちぃろんお金は出しますよ」
ここで少し一悶着。
俺が折れる形でそれは終わり、尻の下でぬくくなった土手の草たちにお別れし、二人で魔法学校に向かった。

なんとか荘みたいな名前がついていそうな木造アパート。
それが、俺たちの宿となる魔法学校。
入り口は引き戸で、開けるとガラガラ、見た目通りの音を立てる。
ホールには靴のぬぎ場所と下駄箱。そして宝くじ売り場のような受付があるが、そこはもぬけのから。
ただ、記入用紙とペンだけが置いてある。
先程から俺の前を歩いていた運転手はそのままそれに向かい、二人の名前を記入する。すると「いらっしゃい」の声。
ぼんやりとした人の輪郭が、ガラスのしきりの向こうに現れていた。
段々ぼんやりは濃くなっていき、そして、立派な人の姿が出来上がる。
こういうシステムらしい。

魔法学校の住居者だか宿泊者は、まさに千差万別。
ランドセルが似合うようなガキんちょからおっさん、元ホステスまで。
家族で暮らしているのも老後の楽しみなんていうのも。
そしてそいつらみんなで、にぎやかに暮らしている。
魔法という好きなものが共通しているからこそ成せる技。
しかしどうも最近は、仲間が減っているらしい。
魔法使い業界自体が下火で雇用先が減っているから仕方がないんだよ。
受付に現れた管理人のおっさんはそう言っていた。昔はここも常に満室だったなんて付け足して。
今の流行りは魔法でなく、もっとこう科学的な、子供だましじゃない――。
ふぅん。
受け取った鍵をさして、ガチャリ。
わりかしキレイな部屋だった。
現金なもので、こうして魔法業界の人間が減っているからこそ部屋をまるまる一つもらえたのだと考えると、なんだか得した気分になってしまう。
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コメント

キモい

流石に引く

  • 2016/11/28 (Mon) 02:00
  • うんちゃん #vTm8BAGM
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