ライブ

ライブを見に行くために電車に乗る。経験者である友人曰く、その服装では会場の入り口で弾かれるとのことだが、まぁそれは行ってみないとわからないということで座席に腰掛ける。ドアに一番近い、手すり付きの席だ。

出発と同時に振れた傘を手で抑えると、なぜか柔らかい感触が甲に広がった。そちらを見ると女子高生。その目に映るは怯え。ちょうど俺の手の位置に尻がある。そしてなぜかその尻には、色とりどりの持ち手を備えた五本の傘がもたれかかっていた。あの五本を貫通するのかという、俺の驚愕の顔をピックアップしたギャグ漫画的なツッコミの一コマが頭の中に浮かぶ。

俺を見下ろす女子高生の顔は恐怖心による逡巡が浮かんでいたが、結局俺は腕を掴まれた。僕は傘が落ちないように手で抑えただけで、いえいえお尻なんて全然存じませぬ。白を切ろうとするが、女子高生は声もあげずただ俺を睨むのみ。

あぁ訴えたかったお好きにどうぞとその女子高生に言ってみる。あえて声を張り、周りの注目も集めることを忘れない。手の力がすこし緩まった気がする。集団だとこうはいかないが、結局単体なら女子高生も女子なのだ。事を大きくしたいのならどうぞどうぞと追い打ちをかける俺。

バンダナ忘れたから帰るわと笑いながら友人に告げる俺。バンダナはこのライブに参加するうえでの必須アイテムなのであり、すでに頭にバンダナを巻き終えた友人はただただ呆れている。そのまま会場入口の門まで共に行き、そして別れた。学校か動物園にでもありそうなゴテゴテした門を背に、俺は、この夜の家路をどう楽しもうかと考える。まぁとりあえず、今日一日を振り返る時間はたっぷり欲しいな。リュックからタバコを取り出し、そして歩きだす。向かいからやって来た自転車乗りが横を通り過ぎる。バカに見えてるんだろうなぁと薄ぼんやり。
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フクロウ

一階の和室に鳥がいた。廊下から差し込むわずかな光しかない薄暗の中、畳のうえで縮こまっていた。人間の動作でいうなら体操座りという様子。あぁこんな愛くるしいのなら、恐らくこいつは鳩の仲間だろう。手のひらに乗せたカマボコをついばむその仕草を眺めながら俺は思う。窓でもあけて逃がすのが筋なのだろうが、もう少しこいつには家にいてほしい。戸を閉め、夢にみた鳥飼い生活の実現に胸を踊らす。

一応家族には「一階に鳥がいた」と伝えておく。そして俺が向かうは風呂場。和室を開けた覚えはないが、なぜかそこに昨日の鳥がいた。頭上から照らす、強いLEDの光に映るはデカイ目と広い顔面、そして地味な茶色ばね。あぁなるほど、こいつの正体はフクロウだったのか。近くにはそのミニチュア版がいた。親指サイズだが、やはりその目はえらくデカイ。

実は昨日のあの出会いから、まるまる一個のかまぼこをあげたことを悔やんでいたのだ。ポケットから取り出したパック詰めのかまぼこを半分にちぎり啄ませる。半透明のカマボコがみるみるみるみる小さくなっていく。そのとき、件のフクロウが語りかけてきた。悩みの相談。自分は100年しか生きておらず、人間の言葉が話せない。大学もでていないし――。それは大変だなぁとただただ目で訴えるしかない俺。言葉が通じない相手に対するやりづらさを若干に感じる。しかし君、こうしてテレパシーで訴えかけてくれてるじゃないか。覚醒している今なら突っ込めるのだが、夢の中の俺はただひたすら流される。

beata undine

学期初めのホームルームの時間、クラスで話し合って自由授業の内容を決定することになった。俺はポルノ女優、beata undineのために朝鮮語の授業を推し、そしてそのままそれを自由授業の枠へ押し込むことに成功する。俺の隣の席に座っている彼女に対して俺は好意を寄せていた。しかし、彼女は聾者なのである。

朝鮮語の授業が始まった時、クラスメイト全員がそうであるように彼女も水着姿をとっていた。この授業の受けるうえでの必須なルールなのである。教壇に立った講師は、まず、小手調べとして朝鮮語の聞き取りの軽いテストを行った。講師が流暢な朝鮮語を繰り出し、クラスメイトがペンを捌きはじめる。彼女も必死に講師の口の挙動を読み、周りに着いていこうとしていた。しかし、彼女の机に広げられている紙面には空白が目立っている。テストが終わり、講師は、学期末の試験は今回行ったような朝鮮語の聞き取りであると皆に告げた。クラスメイトは先程の難易度もあってゲンナリした声を挙げるが、聾者である彼女はそれら含めてすべてに対して置いていかれている。

俺は授業を受けながら、彼女への理解がまるで足りていない自分を嘆いた。俺がこの授業を推した理由は結局彼女のためにはなく、ただその水着姿を見たかっただけなのではないか。授業が終わった今、彼女が未だ知らぬままでいる学期末のテストの内容を告げるタイミングが掴めない。

林間学校

林間学校的なやつに行っている。お世話になっているオバちゃんのために、ただひたすらホームステイ先近くの池で魚を釣る日々。しかし収穫は費やす時間に対してごくわずか。今日に至っては魚を保存するためのビニール袋を破いてしまい、更にオバちゃんに迷惑をかけてしまった。手渡された手提げカバンの口を広げながら、これはクーラーボックスが必要だなぁと頭の中で云々する。

跳ねる小魚を手提げカバンへ移している時、実はこいつら食べられる種類ではないんじゃないかと穿った考えがふと湧いてきた。これは図鑑などで確認する必要があるなぁと思ったときには、もう頭の中で数冊の本が浮かんでいる。魚類全般を広範に扱った図鑑や淡水魚に的を絞った図鑑などが並ぶ中、俺が選んだのは「兵庫県の池に住む魚」という薄めの本。これなら池の名前さえ知っていればおおよその候補が絞れて手間が省けるという訳である。

さっきまで俺がいた池は窪地だったようで、今の俺はそれを取り囲んでいる野原を歩いていた。長い一本の畦道以外はすべて草木や花で埋まっている穏やかなところだ。ふと近くの木を見上げると、そこには薄ピンクの羽毛を持つ小鳥がいる。さっそく出番だと「兵庫県の池に住む魚」のページをめくると、バッチリその鳥のことも載っていた。スズメ科で、寂しいときも寄り添ってくれる良いヤツらしい。ついでにその近くを歩いていた長い足を持つ小さなサギみたいな鳥のことも調べてみる。しかし名前は分からずじまい。

いつの間にか俺は土管の中にいた。突然のことで少し窮屈に感じるが、十分歩けるぐらいのスペースはあるのでえっちらほっちら進む。ここがどこに繋がっているのかは分からないが、鳥好きの自分としては先ほどの野原に再び出たいもんだなぁと薄ぼんやり考えながら進む。しばらく進むと、土管の内壁のあちらこちらにメモ用紙程度の紙が多数貼り付いていることに気がついた。見るとそれは、俺がこの間不法投棄した部活のメンバーの名札である。あそこの池はここと繋がっているんだなぁやっぱり悪いことはするもんじゃないなぁと、わずかながらまずい気持ちになる。

土管を抜けると先程の野原に近くに出た。これ幸いと再度野原へ向かい、到着するなり畦道を外れ草むらに腰を降ろす。少し遠い位置になるが、視線の先には青いフクロウがいた。柵にピタリと止まり、顔をこちらに向けている。が、俺のことに気づいているかどうかは分からない。すぐに飛びたつ気配はなさそうだったので俺は例の本を取り出した。

猛禽類の項を探すが、あの青いフクロウの情報はなかなか見つからない。しかし、ページを飾る個性豊かなフクロウを見ているとあまり退屈はしなかった。赤紫色をした高温の息を吐き、それを魔法のように操る狼のようなフクロウ。鱗を身にまとったヘビ型のフクロウ。ヘビに擬態した猫みたいなフクロウ。兵庫県のことをまとめた冊子のようだが、彼らが体を預けている大地はことごとく乾燥ゆえにひび割れていた。背景の夕日の大きさも相まって、まるでサバンナのようだ。

写真と文に目を通しては次のページへという作業を繰り返していると、草むらに突いている右手のそばに一匹のヘビがいることに気がついた。こちらをジッと窺っているようだが、俺はとりたててそれを制しようとしない。しかし、俺が本に視線を戻した瞬間そいつが噛み付いてきて事態は急変した。寸前に首根っこを抑えることに成功したのはいいのだが、ヘビは柔軟な頭を動かし執拗に俺の手へ牙を食い込ませようとしてくる。

いつの間にかヘビは俺の手の内から離れていた。そして再び俺は本を読んでいる。ヘビが再度右手に飛びついてきた。俺は視線を本から離さず、感覚だけでやつの首根っこを押さえつける。掴んでもなお俺の視線は本から離れない。右手の中で暴れるヘビ。爬虫類のヒヤリとした感触がときたま手に触れる。だんだん手が疲れてきて握力が抜けていく感じがする。頭の中で、ヘビごときが人間に反抗するとはとナレーションが流れた。

PUBG的夢

スクラップ置き場の外周をフェンスに沿いながら歩いている。このサバイバルで生き残るためには、早いうちから良いアイテムを可能なだけ揃えないといけない。家電製品や車の成れの果てに目を光らせていたその時、残骸の山の中に貴重な回復アイテムである鎮痛剤をひとつ見出した。入り口をみつけるべくフェンスを回り込み、ようやく見つけたそこからスクラップ置き場内へと侵入する。あそこに見える地下へ続く階段に落ちていたのだとそこへ駆けていくが、なぜか目当ての品は見つからない。おかしいなと地上へ戻ると、すぐそばに同じように階段を発見した。なんでこんな場所に二つも地下室があるのかと疑問に思う。

地下空間は広大な面積と高い天井、そして大量のコンテナ類やガラクタ類で構成されていた。適当にぶらつきながらアイテムを探し求めていると、手ぶらの俺には嬉しいクロスボウを発見する。一本しかない付属の矢をゆっくり時間をかけながら装填していたら、先程の階段の方から足音がした。辺りを窺いながら出てきたのは二人の女。それは俺の母親と妹だ。迷うことなくクロスボウを構え、そして母親の頭へ向かって矢を放つ。不意に食らったきつい一発に呻きながら崩れる母親。息の根を止めたというメッセージが出ないことに内心毒づきながら俺は落ちていた釘抜きで追い打ちをかける。二度三度フルスイングをお見舞いし、次の標的として妹に対し視線を向ける。

壁と同化していて気づかなかったが、どうやら地下室内には隠し扉が存在していたようだ。壁際に追い詰めたと思ったら、俺の目の前で妹はそこから逃げ出してしまった。向こうから鍵でも掛けたのか、いくら力を込めてもそこはもう開かない。果てに諦め振り返った瞬間、再び階段の方から物音がした。今度は複数人らしく、軍靴らしい足音の豪勢な合唱が響いてる。先手を打つべく釘抜きを振りかぶりながら近寄ると、音もなく筋骨隆々な大男がニュッと現れた。それを見た瞬間、直感でこいつはサイボーグだと確信する。妹が消えた隠し扉へ向かって駆けるが、やはり扉は開かない。色々もがいたのだが、結局俺はサイボーグによって頭を引っこ抜かれてしまった。その首の断面にはアース付きコンセントのような三つの穴があいていた。