粉瘤治療

ショッピングセンター内の孤児院から行列が伸びている。確かめるまでもない。辛い辛い粉瘤の、切除サービスなのである。
先に行っといてくれと友人に伝え、その列に加わった。何年もの付き合いである尾骨辺りの大物と、ついに縁を切れる機会がきたと胸を躍らせる。
列が進み、孤児院内へ。行列の先頭では、白衣をまとった老医者が子供たちへの問診を行っていた。
事情を聴くなり、即座にその場でオペを開始するスタイルらしい。ベッドも無ければ、換えのメスもない。麻酔も行っていなかった。しかし孤児たちは、口をつぐんだまま至って静かに治療を受けている。
その様子をボンヤリ眺めていると、いつの間にか口の中に異物が入りこんでいることに気がついた。その輪郭を舌でなぞってみたところ、どうやら袋状になっているらしい。
それで分かった。これは、あの治療を受けた誰かの粉瘤なのである。
噛んでみると、膿の匂いととろみがついた甘い味が口内に広がった。手に吐き出すと、潰れた饅頭みたいな物が唾液と混ざってテラテラ光っていた。
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塔の脱出から洞窟

ドラえもんとのび太、その友人たちと共に機械じかけの塔から脱出する。
倒壊プログラムの発動と同時に、博士は多数のモンスターも放ったらしい。声も姿も味方そっくりなロボットを破壊するという行為に、なんとも妙な気持ちになってしまう。本物一同を先に急がせ、俺だけがじっくりとそいつらを処理していく。

中庭へ続くエスカレーターを降りると、ドラえもん一行はそこでティータイムを楽しんでいた。周りをシスプリの妹たちに囲まれ、敵地なのにも関わらずゆったりとくつろいでいる。
「ぜんぜん気づかなかった、オメェすげぇな」
自衛隊が敵をみんな倒してくれたなどとほざく偽妹どもを破壊すると、そうジャイアンが感心した。

塔から脱出すると、街でも同じようなパニックが起きていた。
街のシンボルである飛空艇の1/1スケール模型が、取り付けられていたアーチ型の凱旋門を外れ、坂道を滑りながら道沿いの家屋をなぎ倒していく。巨大アリが逃げ惑う人々を捕食していく。
門を抜けると、そこには50人ほどの町民らが集まっていた。これからどうするかという会議に加わっていると、いつの間にか俺がリーダーに任命されていた。

すごろく状のワールドマップの点滅しているマス。そこが今の街。頭の中の十字キーの左を押し、隣のマスを光らせ、そして決定ボタンを押す。
暗転が晴れると、洞窟の中にいた。ちゃんと隣のエリアに移動することができたらしい。振り返ると、そこには先ほどの町民らも着いてきていた。しかし皆がみな、しんどそうな顔をしながら息を切らしている。
「RPGだと一瞬だけど、ここかなり距離あるんよね。ごめんごめん」と、その様子についつい謝る。

洞窟の地面は飛び石状になっていて、地面と地面の間の溝には爆弾花が敷き詰められている。一つでも誤って発動させてしまうと、連鎖的に爆発を起こし大惨事となってしまうだろう。
慎重に動けよと、町民たちに忠告する。しかし応答の代わりに返ってきたのは、焦げるような匂いとざわめき声。
ついつい混乱し「動くなよ」「ジャンプしとけ」などと矛盾した指示をわちゃわちゃ出していると、轟音と共に辺りが見えなくなった。

視界をくらましていた煙が晴れだした頃には耳鳴りも止み、代わりに幾つもの咳込みが聞こえだしている。
「ライフが2以上減ったやつはいないか」と、それに掻き消されないように声を大にし皆に呼びかけた。
返答がなかったので、自らが周りの顔を見渡す。そして、安堵。どうやら全員ほぼ無傷らしい。見た感じもそうだが、なにより頭の上に浮かんでいる体力を表す横並びのハートのゲージが、みんな最大値なのだ。

魔王

俺たち勇者が駆けるのは草原。先に待つのは魔王。
4体のオークのすぐそばを難なく通り抜け、紫色の雷雲の下、魔王との距離を一気に縮めていく。
背中の剣を抜いた瞬間、魔王が動いた。草原へ雪崩のように這って伸びていく、極彩色の怪しげな分厚い煙。轟音を立たせながら、それは様々な方向に放出されていく。
最初に放たれた物が晴れたと思ったら、そこには青色のスライムが犇めいていた。生みの親である霧の形ぴったりそのままに、草原の遥か遠くまで絨毯のようになっている。
順々に霧散していく霧。その全てがモンスターを残していく。どいつもこいつも一度は顔を見たことがあるザコキャラだが、その数は常軌を逸している。
見渡す限りの草原がすっかり埋まると、今度は先ほどの物と比べると遥かに小さな煙が魔王のすぐそばに現れた。そしてそこからは、青、赤、黄、緑と、それぞれ別のローブを身にまとった小型の幽霊が一体ずつ。
あの四天王を倒さない限り、魔王には攻撃が通らない。それを見た瞬間に確信する。
ここまで来るのにも何時間も掛かったのに、勘弁してくれよ。そんなことを思ってしまう。この草原もアホみたいに広いのに、しかも四天王は、俺の目の前でそれぞれ別の方向へと散っていく。

イオンと焼肉

先にイオンの出口を抜けた父親がこちらを振り返り、中にいる筈だから祖父と祖母を連れてこいと俺に言う。
祖父は出口すぐそばの廊下を歩いていた。祖母はまだ、食品売り場辺りをうろついているらしい。
食品売り場のパンのコーナーには、老若男女の人だかりが出来ている。そこには懐かしいあの常連たちの姿もあった。
巨大なナイフをマーガリンに差し込み、抜けなくなってしまったお爺ちゃん。それを笑いながら指導する、男の子と女の子の二人組。
この光景はいつぶりだろう。あの二人がお爺ちゃんの孫ではないということも、その時の俺はなぜか知っていた。

少し離れた位置から、袋詰めにされたパンが並ぶ棚を眺めている。ロールパンと、見た目は一緒だがその内部にマーガリンが埋め込まれているパン。前者は11個入りで、後者は6個入り。
両者の値札をジッと睨みながら、一個辺りの価格の差を頭の中だけで計算してやろうと意地になっている。

テレビを見ながら家族と焼肉を食っている。箸が止まらない。お茶碗も持ちっぱなしで、所作はどんどんと雑になっていく。
それで、お茶碗を落としてしまった。自分がやらかしたことなのに、その音に肩が跳ねてしまう。フローリングの床に散らばる破片たち。
なんでお茶碗は割れるようになっているのだろうと、その破片を眺めながらバカみたいなことを考える。もっと頑丈な物がほしいとも。
この前旅行で貰ってきた茶碗を使えばいいと母親が言う。自分のお土産なのに、すっかり忘れていた。テレビに映る島田紳助のボイラーのCMが終わるまで待ってから、自分の部屋へと足を向かわせた。
本棚に置かれている木の箱。そのフタを開け、包装紙を剥ぎ、そして比較的綺麗だなと感心する。
このままご飯をよそっても別段問題ない気がした。しかしここで、頭の中にヒカキンのレビューが流れて俺に忠告する。
どうやらこの状態のままでは、茶碗の内側にこびりついている薬剤が苦すぎて食べれたもんじゃないらしい。
ティッシュで内側をグルっと一周させてみると、確かにそれに黒い斑点がこびりついていた。水で洗うのも面倒なので、何度もそれを繰り返す。

トイレにて

洋式便器のすぐそばに、薄黄色の水たまりができている。
ちょうど、降ろしたパンツとズボンがそこに来る絶妙なその位置にできている。
それを避けるために、すこし斜めに腰掛けて用を足すことにした。何だか不潔な気もするので、若干腰を便器から浮かせながら力を入れる。
すると、慣れないもの尽くめで、爆撃地の場所を誤ってしまった。便器の縁に乗っかっている、ひねり出した茶色い物。ケツにくっつかない程度にズボンをズリ上げ、個室内に設けられている洗面所へヒョコヒョコ歩きを急がせる。
手で作った器に水を溜め、少しずつブツを便器の縁からずらしていく。仕上げにトイレットペーパーで水分と残滓を拭い、同じ過ちを繰り返さないために、床の水溜りへ仕方なく靴を重ねる。

溜まっていたものをすべて出し終わりトイレットペーパーの方へ手を伸ばすと、その拍子に携帯を斜め前方の床へ落としてしまった。手を棒のようにし、体を大きくそちらへ傾ける。しかし中々届かない。もどかしい感じに、動作が段々と大ぶりになっていく。
背中に、何かが服の表面を擦りながら便器の中へと落ちていく感触が走った。バシャンという大きな水音と、ケツに跳ねる飛沫たち。
思わず立ち上がって覗いてみると、俺が先ほど便器後部の台に乗せた筈のリュックがそこに沈んでいた。体をあまりに突き出したせいで、支えがなくなり落下したのだ。自分がしでかしたことの馬鹿さに気がつき、かなり酷い悪態を付く。
救出したリュックに顔を近づける。幸いにも、中に染み込むよりかは早く対処できたらしい。しかし、確かに香るのはウンコの匂い。